呼び込み君ミニ展示ケース製作編

はじめに

今回は、こちらの品を入手致しました。

呼び込み君ミニ商品画像
呼び込み君ミニ

スーパーサウンド『呼び込み君ミニ』|株式会社 青島文化教材社 (aoshima-bk.co.jp)

胸の黒い「カラータイマー」の様なポッチを押すと、スーパーで良く耳にする「あのメロディ」を奏でるミニチュアフィギュアです。これを展示する装飾ケースを製作し、装飾ケースに展示した状態でも、ボタンを操作してメロディ音を響かせる仕組みを作りたいと思い立ちました。個人での使用だけでなく、おもちゃ売り場などで使用される「商業用什器」の面も鑑みて製作します。
早速ですが、ギミックを考え、図面を興しました。

呼び込み君ミニ展示ケース図面

※マル秘資料の為、ボカシを入れております。ちなみに、このボカシはアクリル板を用いております。
主となる業務を行いつつ、構想と図面製作に3~4日というところでしょうか。
この図面を基に、製作に取り掛かります。

材料を切り出しますよ

使用する材料を「パネルソー」で裁断します。備え付けのゲージで裁断する寸法を設定した後、空気圧で材料を押さえて固定し、上下動する鋸刃が材料を裁断していきます。

切り出した材料

切断した小口は鋸刃の切り跡が残るので、ここを手押しカンナ又は研磨機で仕上げを行います。
なお、四角形以外で、角度の付いた板材の切り出しや穴あけ加工は、NC機を用いて加工します。
(前回のプラモデル寿司展示ケース製作編をご参照ください。)

切り出した材料(仕上げ後)
材料を組み合わせますよ

部材が揃いました。
次に、これらの部材を、溶着液で貼り合わせていきます。

部材同士をテープで仮止めするのですが、かみ合い具合やズレを注意深く確認します。
ここで上手く行かないと、出来上がりに大きく影響が出ます。
仮止めといっても、組み合わせた箇所が動かないよう、タイトに止め付けします。
そしてわずかな隙間を作り、溶着液を流し込みます。

ベースの外側が出来上がりました。

ベース部分画像

被せるカバーはこの様に仕上がりました。

カバー部分画像
新兵器登場

本体のボタンを押すアームは今回の肝となりますが、図面製作ソフト「ソリッドワークス」で3D作図し、弊社にて新規導入した3Dプリンターを用いて製作致しました。
これまでよりも繊細に入り組んだ造形が製作出来る様になりました。

3Dプリンタ画像

こちらの画像の左奥には、前回の製作リポートにてお届けした「タヌキ」がチラ見えしてます。
実は先のリポートで紹介した以外に、大きさを変え、かつ違う表面処理した品もあります。
そのリポートの際には、3Dプリンターの実働風景がありませんでしたので、こちらのリポートで改めて
出力されている風景を御紹介致します。
なお、機能の紹介は、お知らせにて御確認頂けます。

アーム画像

本体のボタンを押し込む「アーム」がこの様に出来上がりました。

完成!…しかし本当の戦いはここからだ

これらの各部材を組み込み、完成した姿がこちらです。

完成?品画像

ベース部分の赤いボタンを押すと、白いアームが後方へスライドし、呼び込み君ミニ本体のボタンを押して、音が鳴るという仕組みです。
また、ケースのカバー上面に音が漏れ出る様に穴を開け、更には背面にこの製品のブリスターパックを併せて展示出来るようにポケットを設けました。
さて、音が鳴るまでは完成とはなりません。ボタンを押す間際、緊張が走ります…。

スイッチ・オン!!

…無情にも、聞こえるのはボタンを押し込む音のみで、メロディは響かず…目論見通りとはなりませんでした。
端的にいえば「失敗」です。

改善点を探りますよ

失敗の理由としては、

  1. 呼び込み君ミニの固定のため設置箇所にへこみを設けましたが、充分に固定できず呼び込み君ミニ自身がアームに押し込まれて倒れてしまう。
  2. 呼び込み君ミニ本体のボタンに触れた際アームが細くてしなってしまう。
  3. 呼び込み君ミニ本体のボタンと、アームの接触クリアランスが、思いの他大きかった事。

上記理由を踏まえて、不具合を解消する方法・対策を考案しました。

  • 呼び込み君ミニ設置部後方に「壁」を増設する
  • アームを必要最小限に増幅しかつクリアランスを見直し、しなりを回避する。

この改修案に沿って、追加部材の設定・再製作を行いました。

3Dプリンターによるアームは、素材自体が柔軟な為、ボタンを押し込む際のしなりを解消することは出来ませんでした。
そのため、3Dプリンターの使用を断念し、弊社主軸であり、硬度に勝るアクリル材に変更して製作する事にしました。
また、呼び込み君ミニの視認性を阻害しないよう、アームはスマートな形状を想定していましたが、ボタンに押し負けてしまうため、その点も見直しました。
なお、使用する材料を透明のアクリル材に変更した事もあり、視認性に問題はないため、必要最低限の強度と形状を模索しました。

こちらは数々の試作です…

軸を太く改修したり、前後の「渡し」の位置を調整し、押し込む力が逃げない位置を模索しました。

方向性、定まる

業務の合間を縫って、バランスの調整に試行錯誤を繰り返し、苦節2か月…
ようやくきちんと作動する方向性が見いだせました!!
その結果、アームは最終的にこの様な形状になりました。

前後に渡す箇所が3Dプリンターの時よりも相当太くなっております。
また、別の方向にも進化を遂げております。
試作を繰り返す間に、カバーより流れ出る音が通常時よりも小さくなる事も判明したので、カバー表面に施す音抜けの穴も追加する事としました。ただし、前面に開けると呼び込み君ミニ自体を遮って見難くなるので、上面に加えて両側面に音抜け穴を追加しました。
同時に、カバー本体に呼び込み君ミニ本体の倒れを防ぎつつ、ボタンの押し込み力を確実に伝える為のブロックを追加しました。

カバー部分(改良後)
いま、ふたたびの呼込砲

全ての部材が揃いましたので、組み立てて呼び込み君ミニを設置し、完成です‼
(その他にも改修をしておりますが、割愛させていただきます…先の完成品画像と比較するとその箇所が分かるかなぁ… レッツ間違い探し!)

完成品画像

しかし、音が鳴るまでは完成とはなりません。ボタンを押す間際、緊張が走ります…(リフレイン…)
では、「呼込砲 発射!!」の合間にある赤いボタンを押します。(このプレートも増設しました!!)

放てッ、呼込砲!!!!

見事に作動し、あのメロディが作業場内に響き轟きます。成功です!!

ケースの両側面に開口を増やした結果、ケースなしの単体で鳴らすよりも共鳴が発生し、音の広がりは格段に上がりました。
本物の呼び込み君ミニに引けを取らない音量です!!

プレートについて補足です

プレートの製作方法を説明しますと…

プレート(着色前)

NC機にて文字を彫刻し、屋外耐用のアクリル塗料で着色しました。

プレート(着色後)

今回は、製作コンセプトや可動ギミックの考案を含めた製作を行いました。
ここまでに思いのほか時間を要し、想定外の事態に冷や汗をかきまくりましたが、諦めずに地道に進めて、無事に形にすることができました。
これは、3Dプリンターを含めて製作にまつわるノウハウを蓄積出来た好機だったと考えます。

皆様もお手持ちのアイデアが御座いましたら、その具現化の手助けとなれば幸いです。
お気軽にご相談ください。